以前に、ナイトビジョン(Night Vision)を利用した天体観測について紹介しました。
NVの基本原理や特徴、使用感についてお話しました。その後、自身の使用経験と共に
浜松市天文台の主要望遠鏡(20cm屈折赤道義)にコリメート使用で天体観望会を実
施しました。
NVの使用感について再報告します。
関連記事リンク
星空を楽しむ観測ツールNight Vison (NV)の紹介
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NVを使用した眼視的な見え方
ナイトビジョン(NV)PVS-14は、焦点距離25cm、F1.2、倍率1倍、見掛視界40°が
基本スペックです。
心臓部になるイメージインテンシンファイア(I.I)の本体感光部は18mmサイズに
なります。
白色蛍光タイプの使用でモノクロの見え方になります。
オートゲインによる自動調整機能があり、本体である程度の明るさを自動調整する機能
があります。
また手動ダイヤルを用いたゲイン調整機能もあり、対象天体に対するコントラスト調整を
任意に行うことができる。
![](https://science-motley-story.com/wp-content/uploads/2022/02/NV-01-01-1024x696.jpg)
NV外観 ミリタリーな外観、装置は小型で重量はそれほどない
![](http://science-motley-story.com/wp-content/uploads/2022/02/NV-002-01-985x1024.jpg)
対物側 左に見えるのが、ゲイン調整ダイヤル
![](http://science-motley-story.com/wp-content/uploads/2022/02/NV-003-01-849x1024.jpg)
接眼部 下部のダイヤルが電源ON、OFFになる
I.Iは、デジタルカメラのような「フレームレート」(光の蓄積)ではなく、直接入っ
た光を増幅して蛍光管で光らせるためリアルタイムな像をそのまま見る事ができるため、
眼視観測と同様の見え方ができる。
肉眼より2~3等級程暗い星が見える。
空の良い透明度の良い空ならなお良いのだが、浜松市内南部にある浜松市天文台の屋上
から眺めても、アンドロメダ銀河、ペルセウス二重星団おうし座プレアデス星団、オリ
オン座M42散光星雲は、確認できました。
春霞の空や月明りの空でもオートゲイン機能が働き、星を見え、雲の微細な動きも日中の
ように見る事ができます。
20cm屈折望遠鏡をNVを通して見る
星を見る会のご協力で、浜松市天文台の主砲20cm屈折赤道義にNVを覗かせて星空を見る
観望会を3回実施しました。
星雲星団を観望対象にその見え具合を紹介します。
![](http://science-motley-story.com/wp-content/uploads/2022/02/DSC_2219-01-684x1024.jpg)
浜松市天文台の20cm屈折赤道義望遠鏡
散開星団や球状星団
散開星団や球状星団は、NVでの絶好の観望対象です。
NVは、恒星状の光に鋭敏で、浜松市内の光害の中でも微光星が見えるため天体写真に
近いイメージで見る事ができます。
メシエ天体クラスの球状星団でしたら、名前の通り、球状に集塊した姿を見る事がで
きます。
球状星団の本来の天体美を鑑賞できます。また、球状星団を構成する微光星がそれぞれ
シイーングの影響で明滅するため、天体写真では味わえないリアルタイムな天体像を見
る事ができます。
銀河系外星雲
さんかく座のM33を見ました。大きな広がりを持った星雲の存在は、浜松市内の光害
の中でも確認できますが、系外星雲の渦巻きのイメージを体感するには、郊外の透明度
の良い空の条件の方が良さそうです。
川名(浜松市北部郊外)で望遠鏡を通して見るM31(アンドロメダ銀河)は、中心部
からM32、M110の伴星雲の辺りまで、渦巻き構造を思わす濃淡のある光の広がりが
見え、そのスケールの大きさと美しさに驚かされます。
おとめ座のM104も小さいながら天体写真で見るソンブレロの形状と中心部をナイフ
で切ったようなシャープな像で暗黒部が見え、夜空にぽっかりと浮かぶ系外星雲の姿を
リアルタイムに見る事ができました。
![](http://science-motley-story.com/wp-content/uploads/2022/02/guillermo-ferla-Oze6U2m1oYU-unsplash-1024x680.jpg)
M31 アンドロメダ座系外星雲 NVの撮影画像ではありません
散光星雲
オリオン座M42散光星雲は、絶好の観望対象でした。
鳥が翼を広げるような星雲の美しい光と星雲中心部のトラぺジウムも良く見えました。
トラぺジウムは、星雲中心部に位置するため天体写真では、白くつぶれてしまいますが
NVでは、トラぺジウムの光と星雲の光が階層的にコントラストを持ってそれぞれはっ
きりと同一視野に見る事ができます。
同じくオリオン座に見える燃える木星雲(NGC2024)や馬頭星雲は、残念ながら
見る事はできませんでした。
NVの対物側口径部にはフイルター取り付け用の溝があり各種フイルタも用意されて
おりHαタイプのフイルタを取り付ける事で、これらの散光星雲も観望対象にできる可能
性があります。
惑星状星雲
こと座の惑星状星雲は絶好の観測対象でした。
天体写真でおなじみのリング状構造を観望して楽しむ事ができました。
15cm双眼鏡25倍で見るM57も低空に関わらず、小さいながらリング状構造をはっきり
見る事ができます。
![](https://science-motley-story.com/wp-content/uploads/2022/02/guillermo-ferla-QTnOhxGJZkk-unsplash-1024x681.jpg)
惑星状星雲 NVでの撮影画像ではありません
NVでの限界等級についてと限界について
プレアデス星団のフライングチャートを用いて限界等級について調べてみた。
条件は、浜松市の市街地で、20cm屈折望遠鏡 2400mmを用いてNVを通して
プレアデス星団中心部アルキオーネ(η)付近の標準光度星野フライングチャートを
用いたところ12.0等級から13.0等級ははっきり見え14.0等級より暗い星は見え
ないようでした。
NVを用いれば、恒星状天体でしたら、市街地でも望遠鏡口径の限界等級に近い星まで
見えている可能性があります。
NVでの使用の限界を上れば、月や惑星等の輝星は、光が強すぎて、表面細部の観察は
不可能で、ハレージョンやアーチファクトを起こします。
また、恒星状天体も明るさや色の性質の影響で点状にならず、にじみが生じたり、
面積のある広がりを見せたりする事があります。
150mmのEDレンズ使用のフジノンならば、月や惑星の表面模様やデイテイールを
観察でき恒星状の星は、ピント調整を行えば鋭い点状に収束して、微光の星雲星団や
小彗星との鑑別が可能ですが、NVにはここまでの解像度と分解能は持ち合わせて
おりません。
しかし、春霞のある空や満月に近い月明りの空でもコントラストをよく星を見ること
ができる。
満月下の空でも15cmフジノンの単眼に覗かせることで8から9等級くらいの星雲星団
なら見えるというのはNVの強味といえます。
![](https://science-motley-story.com/wp-content/uploads/2022/02/astronomy-gf6e7acd92_1280-1024x783.jpg)
プレアデス星団 NVでの撮影画像ではありません
ナイトビジョンで見たレナード彗星
2月28日頃のレナード彗星を15cm双眼鏡40倍にNVを覗かせて見たが、鋭く中央の明
るいコマが恒星状に輝きその周囲を扇状のガスが取り巻き、後方に尾を伸ばしている姿がよ
く見えました。
村上茂樹さんのホームページにも同じころのレナード彗星をNVで見た感想が書かれてあ
りました。
核からジェットが噴出してエンベロープが発達し、尾の南側は直線状にスッパリ切り取った
ように見えた。NVのゲインを上げ下げすると、彗星の淡い部分と濃い部分が見え隠れした
という表現でレナード彗星を観察している。
表現は異なるが彗星の細かい形状が、NVによって見えていた。
関連及び一部引用記事
コメットハンター村上茂樹のホームページ 2022年1月8日より
まとめ
今回は、ナイトビジョンを用いた天体観望会を行いその見え方について紹介した。第3世代の
I.Iを用いれば市街地でも望遠鏡の限界等級近い天体を見る事ができる可能性がある。
星雲星団も天体写真に近いイメージで見る事ができるため、天文ファンや一般観望会に用いれば、
よりリアルな星空の世界を紹介できる可能性があります。
また、望遠鏡+NVへ更にスマートフォンやカメラを取り付けて写真撮影したりHαフイルタの
使用したりすれば、散光星雲等の観望対象がもっと広がる可能性も秘めている。
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