昨年、開催された遠州天体写真愛好会の写真展ですが、アマチュア天文家の
力作が勢ぞろいしております。
今回は、系外銀河の撮影に取り組み、天文雑誌の天体写真投稿に数多く
投稿掲載されているベテランの宇都正明さんの作品を紹介します
タイトル画像は、静岡県宇都氏の撮影画像です
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パロマー天文台の天体写真にあこがれて 宇都さんの紹介
宇都正明さんは、子供の頃に見た、図鑑のパロマーの小宇宙の写真に憧れて、
銀河撮りを中心に行っているそうです。
彗星も変化があって楽しい天体です。どちらかというと、田代さんと同じく、
明るくなった彗星をどう捉えるか興味があります。
地元の光学技術を専門にする企業にお勤めされており、仕事柄CCDやCMOS
センサーの知識や技術に詳しくそれが、天体写真撮影にも生かせれております。
「科学計測用途と、鑑賞用天体写真とでは求めているものは違う(使い方が違
う)というのも、識ることができるのは、僕にとっては大きな財産なのかも
しれません。」と語られております。
宇都さんは、個人ブログも開設されております。
下記にブログ名とリンクをご紹介します。
このブログにはご自身の撮影された作品や撮影秘話の数々が投稿されております。
あしあと ~星空航海日誌~ UTO
遠天写真展の作品の紹介
宇都さんが昨年の遠天写真展に出展された作品になります。
干潟星雲 M8
いて座にある散光星雲です。
散光星雲とは、宇宙に漂うガスや塵が近くの明るい星によって照らされて
輝く星雲のことで、紫外線によって励起されて特定元素が光る輝線星雲と、
単純に星の光を反射する反射星雲に大別されます。
干潟星雲は、輝線星雲で、この写真は、ハッブルパレットというハッブル
宇宙望遠鏡が採用したカラー合成方法を用いて作画しています。
波長順に、酸素イオンOIII 500mmを青色、水素イオンHα656nmを
緑色、硫化イオンSII672nmを赤色に割り当て、疑似カラーとしています。
各元素の分布を色の差として視ることができて、天文台画像ではメジャー
となっている表現方法です。
夏の代表格の天体ではあるのですが、町中から見ると、案外淡く、中心部
しか見ることができません。この天体の美しい姿をみようとすると、少なく
とも郊外に出かける必要があります。
双眼鏡で見ると天の川の星々の中にほのかな星雲が広がり大変美しい姿
を見ることができます。
《作者より》
ネビュラブースターという星雲を強調するフィルターを使って撮影し、
ハッブルパレット合成を行いました。
<撮影データ>
撮影日時 2021年5月3日、9日 24時57分~
露出 NBZ+R(Hα)3分×29コマ、NBZ+B(OIII)
3分×52枚
NB3-PM(SII)3分×47
合計露出時間 384分
カメラ ZWO ASI1600MM-Cool冷却CMOSカメラ
–10℃冷却/Gain0/Offset15
光学系 タカハシイプシロン200望遠鏡(口径200mm
焦点距離800mm)
撮影システム ビクセンアトラクス赤道儀
Kenko500mm望遠レンズにて
オートガイド
印画システム キヤノンPixusiP8730プリンタ、コクヨ 絹目調
画像処理ソフト ステライメージ9、PhotoShopCS5他
撮影地 磐田市 自宅にて
スモールスタークラウド M24
たて座付近で一部濃くなっている天の川をスモールスタークラウドと呼んでいます。
天の川は暗いお山で見ると肉眼では煙のように見えるのですが、特にこの部分が濃密
な雲として見ることができます。
そのような肉眼で天の川がモクモク見える場所で、双眼鏡を使ってみると天の川は
無数の星々の集団であることが見て取れます。
それはそれは大変美しい眺めで、キャンプなど、でかける機会があったら、
ぜひとも見て欲しいと思います。
さて、ここでは、その天の川の濃い部分を望遠鏡で拡大撮影してみました。無数の
星々が煌めく、まさに星々の大海です。
しかし、残念なことに写真では暗い宇宙で見た星空の美しさを再現することは
できません。
ぜひとも、暗い空の下で双眼鏡で見て欲しいと思います。
《作者より》
この星域は好きな天空のひとつ、ですが、写真に興そうとすると、難しくて、
なかなか、双眼鏡で見た美しいイメージを伝える写真を撮ることができず、
写真の限界を感じてもいます。
暗い空の下、目で見る宇宙は美しい・・!
<撮影データ>
撮影日時 2021年3月17日 28時19分~
露出 L=3分×6,R=3分×3枚,G=3分×3枚,
B=3分×3枚
合計露出時間 45分
カメラ ZWO ASI1600MM-Cool冷却CMOSカメラ
–30℃冷却/Gain0/Offset15
光学系 テレビューGENESIS SDF屈折望遠鏡
(口径101mm 焦点距離540mm)
撮影システム ビクセンアトラクス赤道儀、Kenko500mm
望遠レンズにてオートガイド
印画システム キヤノンPixusiP8730プリンタ、キヤノン
プラチナペーパー
画像処理ソフト ステライメージ9、PhotoShopCS5他
撮影地 磐田市 自宅にて
亜鈴状星雲 M27
こぎつね座にある惑星状星雲です。 惑星状星雲とは太陽のような星が最後を迎える際にガスを放出。 そのガスが星からの光に照らされて美しく輝く星雲です。 亜鈴状星雲は、惑星状星雲の中では比較的大きく明るい天体で、 望遠鏡を使うと肉眼(眼視)でもよく見えます。鉄アレイのような 形に見えることから、亜鈴状星雲の愛称があります。 《作者より》 ネビュラブースターという星雲を強調するフィルターを使って撮影し、 亜鈴状星雲の周辺の淡い部分まで描きだしてみました。 この種の星雲は特定の輝線で輝いていることから、フィルターの性能を 十二分に発揮し、町中からの撮影でも美しい星雲の姿を描きだしてくれます。 <撮影データ> |
撮影日時 2021年5月30日、31日 23時20分~
露出 NB4-PM+R(Hα)3分×57コマ、NB4-PM+B(OIII)
3分×53枚
R=3分×7枚,G=3分×7枚,B=3分×7枚
合計露出時間 393分
カメラ ZWO ASI1600MM-Cool冷却CMOSカメラ
–10℃冷却/Gain0/Offset15
光学系 英Orion CT12反射望遠鏡(口径300mm
焦点距離1200mm)
撮影システム タカハシNJP赤道儀、OAG9オフアキシス装置にて
オートガイド
印画システム キヤノンPixusiP8730プリンタ、キヤノンプラチナ
ペーパー
画像処理ソフト ステライメージ9、PhotoShopCS5他
撮影地 磐田市 自宅にて
らせん状星雲 NGC7293
みずがめ座にある惑星状星雲です。
惑星状星雲とは、太陽のような恒星が一生を終える際に、周辺にガスを放出します。
ガスを放出しきった恒星は、白色矮星として輝きます。
この時に、放出した周囲のガスを照らし、輝かせます。
らせん状星雲は満月の半分ほどの大きさがあり、昔の書籍では最大の惑星状星雲と
いわれていたこともありました。現在ではより大きな惑星状星雲も見つかっています。
なお、2007年7月7日に7つの願いが叶う、というチェーンメールで添付されていた
「神の目」の画像が、ハッブル宇宙望遠鏡が撮影したらせん状星雲だったことから、
最近では、神の目星雲とも呼ばれています。
《作者より》
ネビュラブースターという星雲を強調するフィルターを使って撮影し、らせん状星雲
のディテールに迫ってみました。
中心にある白色矮星からガスが放出された様子をなんとか描出してみましたが、どう
でしょうか。
使用している赤道儀は30年も前の骨董品ですが、同じ遠天の仲間が自動導入装置を
作成、レトロフィットしてくれました。
まだまだ戦えます。
<撮影データ>
撮影日時 2020年9月14日他2晩 21時13分~
露出 NB4-PM+R(Hα)3分×34コマ、NB4-PM+B(OIII)
3分×29枚
R=3分×11枚,G=3分×8,B=3分×8コマ
合計露出時間 270分
カメラ ZWO ASI1600MM-Cool冷却CMOSカメラ
–10℃冷却/Gain0/Offset15
光学系 タカハシ イプシロン200(口径200mm
焦点距離800mm)
撮影システム ビクセンアトラクス赤道儀、Kenko500mm望遠レンズにて
オートガイド
印画システム キヤノンPixusiP8730プリンタ、キヤノンプラチナペーパー
画像処理ソフト ステライメージ9、PhotoShopCS5他
撮影地 磐田市 自宅にて
アトラス彗星と勾玉星雲
彗星とは、地球と同じく太陽の周りを回っている太陽系の仲間の天体です。 (そのまま太陽系から出て行っちゃったり、稀によその星からやってきた 余所者の彗星も発見されてもいます。) 気まぐれな来訪者、彗星は、ときおり著名な星雲のすぐ近くを通ることが あります。 今回撮影したアトラス彗星は残念ながら、あまり明るくはなりませんでしたが、 2020年末に、ぎょしゃ座にある赤い星雲に接近してくれて、面白い写真を撮る ことができました。 宇宙は、不変であるという方もいますが、実際には天界は細かな部分では目ま ぐるしく変化しています。 ※緑色の小さなぼんやりとしたものがアトラス彗星です。 《作者より》 不変の宇宙、なんて陳腐な言葉は昔からあります。しかし、実際のところ、宇宙の 変化はなんと大きなことか。 太陽の黒点は常に変化していますし、木星の気流(模様)も大きく変化しています。 彗星も変光星も、また星の移動(固有運動)すら最新機器を使うと数年で判ってしま います。宇宙は変化していくものなのです。 <撮影データ> |
撮影日時 2020年12月10日 露出 3分3コマ 合計露出時間 9分 カメラ 富士写真フィルムX-E2ミラーレスデジタルカメラ ISO1600 光学系 キヤノン NewFD300mmF2.8望遠レンズ 撮影システム ビクセンアトラクス赤道儀、Kenko500mm望遠レンズにてオートガイド 印画システム キヤノンPixusiP8730プリンタ、キヤノンプラチナペーパー 画像処理ソフト ステライメージ9、PhotoShopCS5他 撮影地 磐田市 自宅にて |
DeepSky NGC3190付近
しし座にある銀河群のひとつです。 ヒクソンコンパクトグループ(HCG)44のIDも与えられています。 楕円銀河や棒渦巻銀河、横向き銀河など、様々な形の銀河があり、 まさにディープスカイと呼ぶのにふさわしい領域です。 銀河とは、我々の銀河系と同じ、太陽のような恒星が数千万以上も 集まった天体の大集団のことで、小宇宙とも呼ばれています。 どの天体も、地球より遥か遠くにある天体でお隣のアンドロメダ座 大銀河でさえ、光の速度で230万年かからないと到達できません。 こちらのHCG44は、7200万光年もの遥か彼方にあります。 つまり、光で7200万年かかる距離にある天体、ということは、 7200万年前の姿をやっと今、捉えている!ことになります。 《作者より》 恐竜が絶滅したと言われるのが6500万年前ですから、それよりも 遥かに遠い、 光が7200万年かけてやっと今届く・・・宇宙というのはどれほど 広大なのでしょうか。 僕はそのような遠くの天体をなるべく精細に捉えたいと思っていますが、 大きな望遠鏡と暗いお山の下では、この銀河たちを肉眼でみることができます。 数千万年もの時を経て、届くかすかな光・・それを今、自分の目で捉える・・! 大変、感動的な事でもあります。 <撮影データ> |
撮影日時 2021年3月10日、18日 20時03分~
露出 L=3分×52枚、R=3分×14枚,G=3分×14枚,B=3分×13枚
合計露出時間 279分
カメラ StarlighteXpressSXVR-H694冷却CCDカメラ –20℃冷却
光学系 英Orion CT12反射望遠鏡(口径300mm 焦点距離1200mm)
撮影システム タカハシNJP赤道儀、OAG9オフアキシス装置にてオートガイド
印画システム キヤノンPixusiP8730プリンタ、キヤノンプラチナペーパー
画像処理ソフト ステライメージ9、PhotoShopCS5他
撮影地 磐田市 自宅にて
画像及び説明資料は遠天のホームページより引用しました
まとめ
今回は遠天写真展の宇都さんの作品を中心にご紹介をしました。
私も小学生から中学生の頃にパロマーの口径5mの反射望遠鏡
(当時は世界最大口径)で撮影された美しい天体写真
の数々を見て宇宙への神秘性と興味を持ちました。
今は、CCDやCMOSカメラの光学センサーの進歩とPCの
画像処理の進歩でアマチュアの撮影する天体写真は、パロマーの
天体写真を越えハッブル宇宙望遠鏡の撮影画像迫るところが
あります。
遠天の写真展のアンケートの中に天体写真を見る機会がない
のでよかったとの回答も見受けられました。
このブログでも普段目に触れることのない天体写真の数々を
今後も紹介したいと思います。
次回は遠天代表の田代さんの作品について紹介したいと思います。
今回の当ブログへの掲載及びリンクを快く承諾頂きました
宇都さんにこの場で感謝いたします。
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