西村新彗星の発見事情について -その2-

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2021年7月22日早朝、西村栄男氏に

新彗星の発見がありました。

その後、所属天文同好会誌に本人による発見時の手記が書かれました。

ご本人より快くご承諾頂きました経緯で、ここに発見当時の様子を

3回に分けてご本人の自筆のままに詳しく掲載します。

今回はその2回目(2日目)に当たります。

発見までの経緯と臨場感を文章から体感ください。

注)タイトル画像の彗星は西村彗星ではありません。

前回(発見1日目)の続きより 

中野さんより中央局のダン・グリーン宛に送られ、私が彗星状天体

を発見したという内容のメールの写しが届いた。

これで他に発見者があればすぐに判明するだろうと思っていたが、

その日は何も連絡が入らなかった。

身体は疲れているのに今朝の彗星状天体が気になり布団に入って

も眠れず、昨日の事が何度も頭の中を巡ってきた。

7月23日 発見翌日の事情

昨夕は曇っていて新星目的の夏の銀河は撮影できなかった

日付が変わり(7月23日)起きて南側の窓から空を見ると木星が

鋭い光を放ち、輝いてた。

夏の銀河を撮影して新星を検出できても、既に昨夕発見されTOCP

(未確認天体確認ページ)に掲載されているだろうから銀河の撮影

はしないつもりでいた。

しかし、銀河が綺麗に輝き、気になるのでいつもの東天の撮影場所

から東に30メートルくらいの所に機材を設置し西空に傾いた銀河を

撮影した。

それから東天の撮影に入り彗星状の天体を写しだすことができた。

いつもの東天撮影場所では電柱が近くにあり彗星らしい天体の位置を

写すことができなかった。

また、3画像を撮影した時刻が送電線と送電線の間に彗星状天体が運よく

入ってくれたことだ。

数分撮影時刻がずれたら送電線と重なり検出できなかっただろう。

このように運が味方してくれたが、これから彗星の名前が付くまでどんな

展開になっていくだろう。

そのような事を考えていたら23日午前1時30分にセットした目覚ましが

鳴り出した。

パソコンを立ち上げると、中野さんから「天体を捉えられたら、各フレーム

の時刻と位置をください。」とメールが入っていた。

支度をして外に出ると北半分が雲に覆われていた。

今朝の撮影は市街地の南、岩井寺の茶畑に決め3時過ぎまで北東天を撮影した。

彗星状の天体がどちらに移動しているのか不明なので、200mmと300mmの

望遠レンズで赤経6.5時、赤緯プラス30度付近を露出を変えながら無心に4時頃

まで撮影し終了した。

我に返り、彗星があるであろうと思われる方向を見ると、毎週登山をしている

栗ケ岳が薄明を背景に美しいシルエットを描き出した。

早く画像を確認したいと家に向かっていると

金子静夫さんから電話が入った。

「何かあったな」と思いながら電話に出ると

色で移動しています。きっと新彗星です。」

との内容で、今まで の不安が一気に吹っ飛んで

しまった。

 私の画像でも北東に移動した彗星が昨日よりも鮮明に写っていた。多くの画像から

7画像を抽出、位置を測定して中野さんに報告した。その日は何か連絡があるのでは

と待っていたが入らなかった。

中野氏によると7月22日08時53分に天文電報中央局(CBAT)のダン氏に西村氏

の新彗星発見を伝えました。

上尾の門田氏に確認依頼をしたのですが、天候がはっきりしなかったようです。

掛川の西村氏による翌日の撮影画像による観測と金子氏の撮影画像の観測情報を受け

中央局のダン氏に再度伝えたようです。

ここまでが発見2日後の状況です。

まとめ

2021年7月22日早朝、西村栄男氏により新彗星の発見がありました。

その後、所属天文同好会誌に本人による発見時の手記が書かれました。

今回、発見後2日目の手記を紹介しました。

1994年の中村•西村•マックホルツ彗星のケースでは、早朝に発見され、

日本人の発見者が2名から同じ新彗星の発見の報告があった事で発見日の

日中には当時のスミソニアンの天文電報中央局に報告され、日付の変わる

前に発見のIAUが発行されました。

今回は、単独発見と低空で観測がむつかしいという条件で確認が長引いて

たようです。

いよいよ発見3日後に大きな進展を迎えます。

それは次回お話します。

関連記事リンク

「西村栄男さん、27年振りの新彗星発見を語る」 アストロアーツ

引用文献

天文同好会 浜松スペースハンタークラブ 会誌 ほし 第181号より引用

参考文献

月刊天文ガイド 2021年10月号 彗星ガイド9月号より引用

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