前回のブログ記事に早朝、起床したら星空を見ようをテーマにお話しをしました。
毎日、星を見る習慣ができるともしかしたら、新しい星と出会えるかもしれません。
ほうき星は、太陽に接近する程明るくなります。
明るい大きなほうき星は、いつ現れるかまったく予測がつきません。
明日、早起きして空を見上げたら、明け方の空に突然、大きな明るいほうき星が見える
かもしれないと思うとわくわくしますね。
2021年7月22日早朝、日本人により新彗星の発見がありました。発見者の静岡県掛川市
の西村栄男氏は、新彗星や新星発見経験のあるベテランのアマチュア天文家です。
氏は、夕刻の西空と明け方早朝の薄明前の時間帯を中心に星を見ています。
今回、所属天文同好会誌にご本人による発見時の手記が書かれました。
天文電報中央局の中野主一さんの西村彗星についての発見事情の手記を交えながら、ここ
に発見から登録に至る3日間を3回に分けて詳しく掲載します。
注)タイトル画像の彗星は西村彗星ではありません
C/2021 O1 Nishimura 西村新彗星発見事情
について 西村氏の手記より
発見第1日目の事情
2021年7月22日木曜日午前4時30分、星空の撮影で涼しかった野外から蒸し暑い自宅
に戻った。
そして、西空に傾いた銀河と薄明で星が見えなくなるまで 東天低くを撮影した画像を
パソコンに取り込んだ。
夏の銀河に新星が出現していれば既にTOCP(未確認天体確認ページ)に掲載されて
いて「今更見つけてもしょうがない。」と気持ちが乗らなかった。
それでもいくつかの変光天体をチェックしてメモに残すことで、今朝の撮影も無駄
ではないと自分に言い聞かせ銀河のチェックを済ませ、東天は後にして仮眠をとる
ことにした。
6時過ぎ、目が目覚めたので彗星目的の東天を撮影した画像のチェックに入った。
前日の朝は南東と東の低空に雲が出ていたので、今朝はそこを重点に撮影した画像
である。
この時期だと新彗星は北東天に出現しているので今朝の撮影範囲での新彗星は全く
期待していなかった。
チェックすると予想していたC/2019L3ATLASと15P/Finlayの2彗星は検出できた
が4P/Fayは検出できなかった。
予報光度は、11~12等星なのに検出できないのはショックであった。
新しい変光天体にも出会わず、チェック作業が終了すると思われた時、小さな面積体の
星が検出された。
「こんなところに予想していなかった彗星がある。」と小惑星や彗星の有無をチェック
するMPチェッカーを起動させたところ、暗い小惑星2個が記載されていて彗星は表示
されなかった。
先の2彗星がMPチェッカーに記載されいた事からあまり深く考えずに中野主一さんに
報告して判断して頂く事にした。
メールを送信後、直接電話を入れてお聞きしたところ、「新彗星の発見情報は入って
いない。
既知の彗星は天文ガイドで調べてほしい」との回答であった。
運悪く天文ガイドを購入していなかったので、吉田誠一さんのホームページを見ると
同じくらいの位置に8P/タットル彗星が増光していることが記載されていた。
あわてて中野さんに電話を入れて「タットル彗星だと思うので発見報告は破棄して」と
お願いした。
ショックで座り込んでいると、中野さんから電話が入り、「タットル彗星の予報位置と
2度程違うので3画像の位置をもう一度測り直してほしい」とのことであった。
私の報告した位置は金田さんのソフトウエアから導き出していたので自信を持っていた
ことと、何回も回帰しているタットル彗星の予報位置が違うとは考えられないので生き
返った心地になった。
念のため3画像の位置を再計測して中野さんに報告した。
西村氏が検出した新彗星の画像 送電線が映り込んでいる。
中野さんの手記より
西村氏からの第1報は、7月22日07時20分に携帯にありました。「また、何か見つ
けたな?」と思いながら、07時18分に届いたメールを見ると「本日。早朝に200mm
f3.2望遠レンズで、03時47分JSTに明け方の低空、ぎょしゃ座を撮影した3枚の
画像上に10.7等の拡散状の天体を発見しました。」とありました。
新彗星かと思い、その位置を調べました。
すでに、現地(掛川市五明)では、03時18分に天文薄明が始まっており、それよりも
半時間ほど遅い撮影時刻でも、発見位置の地平光度は+10.5°しかありません。
「これは、彗星捜索を行っていたな。」と思いながら、近くの既知の彗星がいないかと
チェックしていると、先月号でその増光の期待を紹介した8P/タットル彗星より、天体は、
ちょうど2°程西の少し高い位置にいました。
「発見位置が不確かだとこの彗星かもしれないな。ちょうど、増光時期だし」
と思っていると08時23分に西村氏からも8P/タットル彗星について連絡があります。
「先ほどはご迷惑をお掛けしました。
MPチェッカーに記載がないので早合点しました。
誠に申し訳ありませんが、8Pかもしれません。
検出した画像を送ります。」というメールが届きます。
いったんは、私も「この彗星の増光かも知れない」と考えました。
しかし、経験上、西村氏の位置がおかしかったことは、これまで一度もありません。
西村氏の報告があった位置とは精密観測で2°もの差があるのです。
したがって天体は、8Pとは別の天体です。
08時29分に西村氏に連絡してこの位置の違いを話しました。
ここまでが、発見日当日の発見事情です。
今回はここまでです。
次回は、発見から2日目の手記を掲載します。
発見者の実際の手記より発見から登録までの
緊迫感を引き続き体感してください。
まとめ
2021年7月22日早朝、日本人により新彗星の発見がありました。
発見者の静岡県掛川市の西村栄男氏は、新彗星や新星発見経験のあるベテランのアマチュア
天文家です。
今回、所属天文同好会誌にご本人の書かれた発見時の手記を紹介しました。
発見から登録に至る3日間を3回に分けて詳しく掲載していきます。
下記に地元の新聞紙の掲載記事アストロアーツの関連発見情報をリンクしました。
静岡県の地元の記事の掲載のリンク
自分だけの星「56年超しの夢かなった」
中日新聞 掛川のアマ天文家西村さんが新彗星発見
新彗星発見情報記事
西村さん、新彗星を発見 アストロアーツ
引用文献
天文同好会 浜松スペースハンタークラブ 会誌 ほし 第181号より引用
月刊天文ガイド 2021年10月号 彗星ガイド9月号より引用
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